書籍情報
紹介文
懲毖録(징비록)は柳成龍が、後世の戒めを意図として壬辰・丁酉倭乱を記しました。
書名の出典は、中国古典『詩経』周頌・小毖にある「予(われ)其れ懲(こ)りて後の憂いを毖(つつし)む」から。
文禄の役(壬辰倭乱)が始まる前に、来日した通信使の金誠一が見た秀吉、朝鮮を心配して自ら釜山まで行った宗義智、戦争が始まってからは平壌城に籠る小西行長や咸鏡道に侵攻する加藤清正の動向、提督・李如松と交わした平壌の戦いなどの裏話、李舜臣の活躍など、領議政(宰相)の柳成龍でなければ知らないことを余すところなく記しています。
翻訳された朴鐘鳴氏の日本語訳が読みやすいのは勿論、注釈が非常に細かく丁寧です。よって非常にマニアックな内容にも関わらず、文禄・慶長の役を全く知らない人でも、読んでいて躓くことはないでしょう。
当時の朝鮮朝廷内の党争は熾烈を極めたにも関わらず、氏があとがきで指摘されているように、これについてほとんど触れられていないことについては違和感があります。やはりそこは触れちゃいけない?(笑)
然しながら客観的事実だけでなく、自分の率直な意見や気持ち、また痔病に悩まされいたという、どこか微笑ましいエピソードまでバランスよく挿し込まれていて、吸い込まれるように読破してしまう名著です。