解説
紗帽(サモ,사모)は、高麗末から朝鮮時代の文武官が主に執務を取る際に着る常服(サンボク)に被った冠帽(クァンモ,관모)です。
前低後高の二段式の帽部の後ろに、角(脚)が二つ付いています。
紗帽は国王の翼善冠と共に中国発祥で、高麗末に使臣が明から持ち帰り、官服制度に用いたのに始まります。
朝鮮時代初期は帽部が低く軟角でしたが、明宗(ミョンジョン)の代前後から左右に突っ張った硬角になりました。その後、帽部が高く角が幅広になり、朝鮮時代末期には帽部が再び低く、角も短く屈曲型になりました。
黒紗帽と白紗帽があり、黒紗帽は庶民も婚礼時には新郎が被りました。白紗帽は国喪に被りました。
文禄・慶長の役を企て敢行した豊臣秀吉の肖像は、紗帽と思われる冠を被っています。
朝鮮文武官の胸背(ヒュンベ,흉배)、角帯(カクテ,각대)、貫子は品階(階級)ごとに身に着けるものが細かく定められています。然しながら紗帽はそのような定めがなく(描く分には)有り難いです?
参考文献
- 金英淑(編著)・中村克哉(訳)『韓国服飾文化事典』(東方出版、2008年)
- 張淑煥(監修・著)・原田美佳 他(著・訳)『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、2007年)