解説
朱笠
朱笠(チュリプ,주립)とは、赤い笠。細く割った竹で帽部と鍔(つば)を作り、朱色に塗りました。虎鬚(ホス,호수)すなわち虎のヒゲを挿し、紅色と黄色の珠を通した笠紐(カックン,갓끈)を付けました。
朝鮮時代に文武官が、有事の際、国王随行時、通信使として来日する際などに身に着けた戒服(ユンボク)に朱笠をかぶります。
虎鬚
虎鬚(ホス,호수)は、朱笠の四隅に飾りと挿した白い鳥の羽根です。
初期は麦穂(メクス,맥수)が用いられました。一七世紀後半に第一八代国王顕宗(ヒョンジョン)が温泉への道すがら実った麦を見て大層喜び、臣下たちに麦の穂を挿して豊年を祝うよう指示したことによります。
一八世紀・第二一代英祖の代に虎鬚に替わりました。虎鬚が手に入らないときは麦穂で代用し、後には細竹が用いられました。
虎は周知のとおり十二支に入っていて、かつては中国に多く生息し、韓国にもいました。加藤清正が虎之助の名にふさわしく?朝鮮出兵の際に虎を捕った話は有名です。
日本には生息しておらず、一般的に日本人が虎を初めて見たのは、瓦版・虎見世物に見られるように江戸時代に入ってから。そんなDNAを受け継いでか私ははじめ、虎髭って何の隠喩なのだろうと、単純に理解することができませんでした。
上記瓦版が伝えているように「大猛獣」の虎は、様々な「霊力」があると考えられ、そのご利益にあやかりたいと願っていたのではないでしょうか。
参考文献
- 金英淑(編著)・中村克哉(訳)『韓国服飾文化事典』(東方出版、2008年)
- 張淑煥(監修・著)・原田美佳 他(著・訳)『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、2007年)