解説
1.概要
戦笠(チョルリプ,전립)とは、朝鮮時代の武官が軍服に被った帽子です。
獣の毛を突き固めたもので伏鉢型の帽部を作り、これに鍔(つば)を付けました。帽部には孔雀の羽、頂子(チョンジャ,정자)、象毛(サンモ,상모 )、笠紐の貝纓(패영,ペヨン)などを付けて品階を表しました。
また、帽部と鍔(つば)のつなぎ目に白い紐を廻して結すびました。鍔の左右には黄色い琥珀製の蝉型装飾品を乗せ、裏には藍色の雲文緞(ウンムンダン)を当てました。
2.頂子
頂子(チョンジャ, 정자)は、戦笠や黒笠(フンニプ:黒色の笠)に付ける装飾品。
大君(国王嫡子)は金、司憲府(官僚監察)・司諫院(官僚諫止)といった国王直属機関の官吏と、観察使(知事)・節度使(司令将官)などの地方長官級は玉、取締官の監察(カムチャル)は水晶、堂上官(正三品以上)は銀を用いました。
3.象毛
象毛(サンモ,상모 )は、稲穂のような形の赤い房で、戦笠の頂や、旗・槍などの先に付けられました。
4.笠紐
笠紐(カックン,갓끈)は、笠(カッ,갓)を固定するための紐。貝纓(패영,ペヨン)は、戦笠や朱笠(チュリプ)を飾る堂上官の笠紐で、珊瑚、琥珀、蜜花(黄色の琥珀)、玳瑁(たいまい/カメ)、水晶などで作られました。
5.補記
韓国時代劇ではもっぱら戦笠の色が黒ですが、今に遺る戦笠を見てみると赤色のものが多々あります。
また時代劇では、帽部と鍔のつなぎ目の紐が紅白などカラフルな場合が多いです。文献では確認できませんでしたが、具軍服のイラストにおいて戦笠を紅白の紐で飾ってみました。
戦笠の鍔左右の"黄色い琥珀製の蝉型装飾品"は、時代劇では省略されている場合も多いようです。文献2にあった戦笠には、鍔の左右に丸い黄色い装飾品が付いていたので、イラストはこれをもとに再現しました。
参考文献
- 金英淑(編著)・中村克哉(訳)『韓国服飾文化事典』(東方出版、2008年)
- 張淑煥(監修・著)・原田美佳 他(著・訳)『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、2007年)