解説
1.官服概要
朝鮮王朝の文官・武官の正装は、官服(クァンボク,관복)と言います。
官服は、最も華やかな祝賀の朝服(チョボク,조복)、祭祀の祭服(チェボク,제복)、謝恩の公服(コンボク,공복)、執務用の常服(サンボク,상복)があります。[註]
官服は、一般に文武官が執務をとるとき常服の紗帽冠帯(サモグァンデ,사모관대)を指します。
2.常服
団領
団領(タルリョン,단령)は、朝鮮時代に文武官が常服として着用。襟(キッ,깃)が真っすぐな直領(チンニョン,직령)に対してこう呼ばれています。
胸背
団領の胸と背に胸背(ヒュンベ)が付きます。
色
朝鮮初期は堂上官(正三品以上)は絹で深紅、堂下官(従三品以下)は木綿の深紅の団領を着用しました。『経国大典』(1484年完成)は、下記表の通ですが余り守られませんでした。
階級 | 常服『経国大典』 |
---|---|
堂上官(正三品以上) | 紅袍 |
従三品~六品 | 青袍 |
七品~九品および地方官吏 | 緑袍 |
袍(ポ,포)とは、ズボンのパジ(바지)・上衣のチョゴリ(저고리)の上に着る外衣。団領の色は時代によって変化が著しくてよくわからない、というのが正直なところでしょう。
常服の柄は特に決められていないと思いますが、イラストは薄っすらと雲紋(ウンモン,운문)を施しました。また袖と裾は長く、左胸のあたりに付いている大きなリボンは、オッコルム(옷고름)と言います。
3.紗帽
常服には、紗帽(サモ)という冠を被ります。
4.貫子
貫子(クァンジャ)は、網巾(マンゴン)という朝鮮男性のヘアバンドの左右に付いている小さな環。
5.角帯
常服に絞めるベルトは、角帯(カクテ)。特に官吏の角帯を品帯(プムデ)と呼び、階級ごとに締める品帯が決められています。
6.木靴
官服には、木靴(モクァ,목화)と呼ばれる革製の長靴を履きます。
朝鮮の役人を描く時は、まず品階を定め、それに対応する常服、胸背、貫子、角帯の色や文様をよくよく吟味しなければなりません。そこが面白い点でもありますが、時折発狂しそうになります。(笑)
補註
朝服は祭服とほぼ同じで朝服は赤、祭服は青を用いました。公服は常服とほぼ同じで、冠が公服は幞頭(ボクトウ,복두)、常服は紗帽(サモ,사모)を用いました。
参考文献
- 張淑煥(監修・著)・原田美佳 他(著・訳)『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、2007年)
- 金英淑(編著)・中村克哉(訳)『韓国服飾文化事典』(東方出版、2008年)