解説
1.概要
朝鮮国王が袞龍袍を着用する際には、翼善冠(イクソングァン,익선관)を被ります。中国からの贈与の形をとって導入されました。
帽子の前後二段の段差をつけ後ろを高くします。後頭部には蝉の羽形の飾りが上向きに付いており、これは王が天に属することを意味しています。帽頂の中央から後ろにかけて糸弁(ねじった糸)が付いています。
2.高さの変遷
翼善冠の高さは肖像を見てみると、時代によって変遷があります。
太祖李成桂(在位1392~98)は後段は前段より少し飛び出ているくらいでしたが、英祖大王(在位1724~76)になると後段は前段の二倍以上の高さになります。
現存している国立故宮博物館所蔵の英親王(大韓帝国皇太子)の翼善冠は初期のよう後段に低くなりました。
朝鮮時代は長いですから、官吏が被った冠・紗帽(サモ)もまた、時代によって形が多少変わります。
3.色
文献1によると翼善冠は、中央の糸弁は青、紫色の紗(サ)や羅(ラ)の絹織物で喪中の執務服には黒を用いたとのこと。
韓国時代劇ではきほん、国王が黒く高い翼善冠をかぶっています。現存する翼善冠(同館・英親王)は、当フリーイラストのように中央のねじった糸は紫、紫色で高さも低いです。
参考文献
- 金英淑(編著)・中村克哉(訳)『韓国服飾文化事典』(東方出版、2008年)
- 張淑煥(監修・著)・原田美佳 他(著・訳)『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、2007年)