解説
イラストは、時代考証を踏まえた朝鮮王妃龍補です。以下、国王の龍補との共通点や違いを見ていきます。
1.補(ポ)
朝鮮国王は、常服の袞龍袍(コルリョンポ)に補(ポ,보)と言って、胸と背、両肩の四ヵ所に、金の糸で刺繍された龍を付けました。
大妃(テビ,国王母)・王妃・王女などの王室女性や最上位の女官は、大礼服の円衫や平服の唐衣などに龍補(ヨンポ,용보)を付けました。尚宮(サングン,正五品の女官)や士大夫の婦人は付けません。
蟠龍(パルリョン)に、長生紋のある補は女性に限られ、必ず長生紋を五色の糸で刺繍して区分しました。
2.蟠龍
蟠龍とは、天に昇る前の龍です。国王の補に描かている龍との違いについては、文献など目が潰れるほど見ましたが、龍の爪の数も国王と同じ四つ、形状に違いが別段見当たりません。蟠龍って何…(笑)
あくまで個人的な推測ですが、国王の補は雲―天上、女性の補は長生紋―自然界として、龍の形状ではなく「背景」によって龍or蟠龍の違いを表現しているのではないでしょうか。女性だから華やかな補というより、自然界を描いた結果、色鮮やかになったと思われます。
また補は、宮中の繍房(スバン)という部署で女官によって製作されました。
3.長生紋
長生紋(チャンセンムン,장생몬)は、亀、鹿、鶴、松、竹、不老草、岩、水、雲、太陽など長寿の象徴を集めてデザインした複合文様です。朝鮮独自の文様で長寿の願いを込めて、文武官のシンボル・胸背(ヒュンベ)や婚礼服のファロッ(華衣)など広く用いられました。
参考文献
- 張淑煥(監修・著)・原田美佳 他(著・訳)『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、2007年)
- 金英淑(編著)・中村克哉(訳)『韓国服飾文化事典』(東方出版、2008年)
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