解説
1.概要
花冠(ファグァン,화관)は、朝鮮の女性が礼装姿に被る、最も華やかな冠帽です。
礼冠として使用する時は蝶の飾りを付け、五行説に基づく五色の珠の花と七宝で飾りました。
朝鮮時代末期には、正装時には黒絹の冠である簇頭里(チョクトゥリ)を被り、より華やかに被るときには花冠を被りましたが、ふつうファロッ(華衣)や唐衣と共に用いました。
2.詳細
イラストの花冠は、黒い布張りの紙板に鳳凰紋をあしらい、揺れるバネ飾りの蝶、五色の玉などを付け、また正面には花形、喜の字が二つ並ぶ双喜紋、数珠を繋げた五色の房飾りを付けました。
他の花冠もこのような飾りが大なり小なり付いています。
3.歴史
花冠が用いられるようになったのは、七世紀新羅の文武(ムンム)王の代から。統一新羅時代には宮中で用いられるようになり、内宴で妓女(ギニョ)や童妓(トンギ)、舞女(ムニョ)らが、燦然(さんぜん)たる花冠を被りました。
これが高麗(コリョ)時代に伝承され、貴族や両班(文武官)階級の女性が礼服姿に被るようになりました。朝鮮時代に入ると、形が小さくなって冠帽というよりも装飾に近い状態になりました。
一八世紀の英祖(ヨンジョ)の代には、加髢(カチェ)禁止令が下され、鬘(かつら)の代わりに用いられて一般化。庶民の婚礼にも使用されるようになりました。
4.メモ
王妃髪飾りのトルジャムよろしく、蝶が揺れるバネ飾りは朝鮮おしゃれの鉄板? いろいろな飾りが過剰に付いている余り、へんてこりんな印象も受けますが、こうした朝鮮の面白ろおしゃれがツボにはまりますね。
参考文献
- 金英淑(編著)・中村克哉(訳)『韓国服飾文化事典』(東方出版、2008年)
- 張張淑煥(監修・著)・原田美佳 他(著・訳)『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、2007年)