解説
朝鮮時代の王妃が、即位式や宮中の嘉礼など主要な国事行事に用いる大礼服・円衫姿について解説します。
1.髪型_オヨモリ
朝鮮王妃のこの特異な髪型はオヨモリ、髪飾りはトルジャムと言います。
韓国時代劇では、オヨモリに平服である唐衣姿の妃をしばし見かけます。(それで私も勘違いしていましたが)オヨモリは下記に見る円衫(ウォンサム)などの大礼服を着た際の髪型です。
全体のバランスからいっても、オヨモリは唐衣よりも円衫の方が合っているように見えます。
2.大礼服_円衫
円衫(ウォンサム,원삼)は、韓国女性の大礼服(たいれいふく)の一つ。身分により色や文様が異なります。
朝鮮時代の王妃は金箔の鳳凰紋で深紅の紅円衫(ホンウォンサム)、側室は同紋・紫赤円衫(チャジョクウォンサム)です。
王女は花紋で黄緑色の緑円衫(ノグウォンサム)を着用しました。特に緑円衫は、庶民の新婦婚礼衣装としても許されました。
付け袖(ハンサム)
円衫の袖先には、汗衫(ハンサム,한삼)という白の長い付け袖を付けます。朝鮮時代の王妃は、黄色と真紅または藍色の汗衫に、牡丹紋を連ねた大きな金襴(きんらん)を施したりしました。
補(ポ)
王妃が円衫を大礼服として用いる時は、両肩・胸・背に龍補を付けます。補は、宮中の繍房(スバン)という部署で女官によって製作されました。
大帯
円衫には深紅の大帯を締め、皇后の黄円衫には龍紋、王妃は鳳紋、王女は花紋で金箔を施しました。王妃の紅円衫には藍色の大帯を締めました。上腹部に締め、後ろに結んで垂らします。>>大帯を結んだ後ろ姿
3.スカート_大襴チマ
国王の正室や側室が、大礼服として履いたスカートの裳(チマ,치마)を大襴(テラン,대란)チマと言います。
深紅や藍色の絹織物で、金箔の帯布を二段に縫い付けます。この帯布は、15~17cm幅でチマの裾に付け、同じ間隔を空けて上の方に別の22~25cm幅のもの付けます。丈は一尺(約47cm)ほど引きずるようにします。
皇后(1897以降)は龍紋、王妃(正妻)は鳳凰紋、王女と側室の娘は花紋を施し位を表しまします。円衫の下に履くときは、藍色の大襴チマを履いた上に、さらに紅色の大襴チマを履きます。このとき藍色のチマの裾の金箔のうえに紅色のチマの裾がくるようにしました。
参考文献
- 張淑煥(監修・著)・原田美佳 他(著・訳)『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、2007年)
- 金英淑(編著)・中村克哉(訳)『韓国服飾文化事典』(東方出版、2008年)