解説
概要
オヨモリ(어여머리)は礼装用の髪型の一つで、大礼服を着て儀式に参加する際に結います。
モリ(머리)は韓国語で頭の意なので、直訳するとオヨ頭。オヨモリは、於汝美(オヨミ)、於由味(オユミ)とも呼ばれます。
朝鮮時代の王室の女性ほか、高級女官の至密尚宮、堂上官(正三品以上)の両班家の女性のみ許されました。
オヨモリの作り方
オヨモリは地毛ではなく、加髢(カチェ,가체)と言われる付け毛です。今風に言えば高級ウィッグ。この特異な髪型の作り方は以下の通りです。
1.地毛を束ねる。
自分の髪をうなじで一つに束ね、リボンである短い唐只(テンギ,댕기)や簪(かんざし)のピニョで固定。これは既婚女性の一般的な髪形で、チョクチンモリ(쯕찐머리)と言います。
2.チョプチを付ける。
チョプチは、平たく言うと高級ヘアバンドで、身分を表します。チョプチを付けた髪型をチョプチモリ(첩지머리)と言います。ここでは、下記オヨムチョクトゥリが滑り落ちるのを防ぐために付けます。
3.オヨムチョクトゥリを載せる。
オヨムチョクトゥリ(어염족두리)は、黒の絹冠・簇頭里(チョクトゥリ)の一。黒の織絹に綿を入れ中間の部分を糸で縛ったもので、ひょうたんの形しています。
韓流時代劇などではオヨムチョクトゥリが赤の場合が多く、イラストも説明のためわかりやく色を付けました。
オヨムチョクトゥリは、下記加髢(カチェ)を固定するためにチョプチの飾りの上に載せます。これによりチョプチは、オヨムチョクトゥリに隠れて見えなくなります。
4.加髢(カチェ)を載せる。
大きく編んだ加髢(カチェ,가체)と言われる付け毛を、オヨムチョクトゥリの上に置き、オヨムチョクトゥリに付いている紐やかんざしのピニョで固定します。
5.トルジャムで飾る。
トルジャムと呼ばれる揺れ飾りの簪などを左右、中央に飾って完成です。
ただ華やかなだけでなく、合理的な部分(チョプチ、オヨムチョクトゥリ)があって、それが結果的に見た目のユニークに繋がっているように思えます。
参考文献
- 張淑煥(監修・著)・原田美佳 他(著・訳)『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、2007年)
- 金英淑(編著)・中村克哉(訳)『韓国服飾文化事典』(東方出版、2008年)