二つの身分
良(ヤン,양)
- 両班(ヤンバン,양반):貴族。
- 中人(チュンイン,중인):通訳や医学、天文学、写字や図画など技術系の中・下級官僚。
- 郷吏(ヒャンニ,향리):地方官吏。
- 常民(サンミン,항민):農民を中心とする一般庶民、商工業者など。
賤(チョン,천)
- 公奴婢(コンノビ,공노비):公賤で、宮廷などの公共機関に属す。
- 私奴婢(サノビ,사노비):私賤で、良民に属す。
解説
良と賤
最近の研究によると、朝鮮王朝の法的身分制度は「良」と「賤」に大別されます。
良身分は科挙を受けて官職に就くことができる自由民で、租税と国の役務を負う義務があります。賤身分は奴婢(ノビ,노비)で、男が奴、女が婢と呼ばれました。
奴婢でも一般の農民と同じような暮らしをしている者も多数いて、全てを奴隷として語るのは難しいです。また逆に罪を追えば両班も奴婢に落とされ、経済的に没落して中人や常民になることもありました。
実際、救国の英雄・李舜臣は両班ですが、人生に二度も白衣従軍(一兵卒として従軍)を経験しています。
白丁
白丁(ペクチョン,백정)は元々、無位無官の良人を指す言葉でしたが、第四代世宗が屠畜(とちく:食肉用に家畜を殺す)業者の差別緩和のために「彼らを白丁」と呼ぶのようにと発布しました。しかし 屠畜業者の蔑視は変わらずに、時代を下るに従い被差別民全体を白丁と呼ぶようになりました。
参考文献
- 六反田豊 監修「「良」と「賤」に二分されていた身分制度」『朝鮮王朝がわかる!』(成美堂出版、2013年)22-23頁
- 張淑煥(監修・著)、原田美佳 他(著・訳)「朝鮮王朝の社会構造」『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、2007年)148-149頁