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椎の実形兜
解説
桃山時代(一六世紀)、石川県立歴史博物館蔵「鉄朱漆 微塵叩塗 椎実形兜」(てつしゅうるし-みじんたたきぬり -しいのみなりかぶと)[文献1]を参考に描きました。
加賀藩士家に伝来したもので、全体を朱漆で叩き塗り、張懸(はりかけ)した兎耳と前立の猪の目紋は金箔押です。
椎の実形兜とは
椎の実形(しいのみなり)兜は、椎形(しいなり)兜とも言い、その名の通り、鉢の天辺を尖らせて椎の実に似せて作られています。その発生は室町時代末期頃と考えられ、上級武士から下級武士に至るまで多く用いられたので、椎の実形兜の遺品は多いです。
由来、意味
それにしても兜が何故、椎の実形で「なければならかった」のでしょうか。
椎(しい)は、初夏に香りの強い花を穂状につけるブナ科の常用高木で、日本の代表的な樹種。秋、どんぐり状の赤茶の堅実をつけ、食用にもなります。
秋の季節は、五行説において金気にあたります。木火土金水の五気のうち、金気がもっとも強く、兵器武具、戦の象徴。椎の実形のほかにも桃形、あるいは柿の実形(みなり)兜がありますが、これみな「金気の果実」という共通点は偶然ではないでしょう。
私の知る限り専門書において、兜の視覚的な見所の説明はあっても、由来の説明がなされていません。当時の人は、決して現代人のように五行説に無関心ではなかったので、上記推察する次第です。
参考文献
- 「25 鉄朱漆 微塵叩塗 椎実形兜」『合戦と武具』(石川県立歴史博物館 編集・発行、1998年)73頁
- 伊澤昭二(監修・文)『図説・戦国甲冑集Ⅱ-決定版(歴史群像シリーズ)』(学研プラス、2005年)