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二葉葵兜
解説
国立歴史民俗博物館蔵「二葉葵張懸兜」(ふたばあおい-はりかけ-かぶと)[文献]を参考に描きました。変わり兜であり、鉢は鉄地朱潤漆(うるみうるし)塗。吹返は金箔で抱茗荷(だきみょうが)を配しています。
葵は双葉葵(ふたばあおい)とも言い、葵紋は徳川家康が双葉葵を三つ葉にして家紋にしたという説があります。
何故朱色なのか
葵の葉は緑ですが、どうして前立が朱色で「なければならかった」のでしょうか。葉の形がハートだからと思う人はいないでしょう。
五行説の木火土金水の五気のうち、金気が最も強く、兵器武具、戦の象徴。よって兜の前立は鍬形のように一般に金属を意識しています。然しながら葵の季節は夏とされ、夏は五行説において赤。
当兜は前立が葵であることに特異な印象を受けます。しかし葵にしたことによって、「配色」を赤(朱)にせざるを得なかったことの方に注意が必要でしょう。朱の前立は、これ以外ほとんど見たことがないです。
私の知る限り専門書において、兜の視覚的な見所の説明はあっても、由来の説明がなされていません。当時の人は、決して現代人のように五行説に無関心ではなかったので、上記推察する次第です。
参考文献
伊澤昭二(監修・文)「二葉葵張懸兜」『図説・戦国甲冑集Ⅱ-決定版(歴史群像シリーズ)』(学研プラス、2005年)74頁