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ムカデ前立兜
解説
国立歴史民族博物館蔵「鉄一枚張南蛮鎖冑」[文献1]を参考に描きました。
変わり兜なので桃山~江戸(一六~一七世紀)頃のものでしょうか。一枚の鉄地の兜鉢に金箔押の百足(むかで)の前立がつく奇抜なデザインです。
由来、意味
それでは何故、前立が百足で「なければならなかった」のでしょうか。
参考文献[文献1]には「金色の百足は見る者を威圧したことであろう。」「百足のように恐れられる武将への憧れもあったろう」とあります。然しながら五行説から考えると、強い百足にあやかるというより、強い金気を生み出すための百足と考える方が自然のように思います。
地表や土中に住む百足は、五行説において恐らく土気の動物。前立の素材は一般に、金属、鍍金や金箔押などを施しますが、鉱物や金属類の多くは土の中に蔵されています。また五行説・木火土金水の五気のうち金気がもっとも強く、兵器武具、戦の象徴。
人は土を掘ることによって金属を手にすることができる。土が金を生む、これは五行説・相生(そうじょう)の一、火生土(かしょうど)という考え方です。これでいけば、前立が百足であることは理に適っていると言えます。
これとは逆に相克に基づく変わり兜は水牛脇立。いずれにしても、前立に百足を採用した武将は少ないです。
参考文献
- 伊澤昭二(監修・文)「鉄一枚張南蛮鎖冑」『図説・戦国甲冑集Ⅱ-決定版(歴史群像シリーズ)』(学研プラス、2005年)72頁
- 笹間良彦(監修)棟方武城(執筆)『すぐわかる 日本の甲冑・武具』(東京美術、2012年)