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戦国人物解説

直江兼続(なおえ-かねつぐ)家廃し、文選を「愛」した読書人

目次

序文プロフィール詳細:1.謙信寵愛 2.運命の愛

3.東北版 関ヶ原の戦い 4.直江家断絶 5.泥棒読書人

相関図参考文献関連記事

序文

故(もと)の里閭(りりょ)に還(かへ)らんことを思ひ、帰(かへ)らんと欲するも道(みち)因(よ)る無し『文選』去者日々以疎@古詩十九首

プロフィール

直江兼続
Kanetsugu Naoe

出羽国(山形県)米沢藩祖・上杉景勝の側近。幼名・与六(よろく)。

お金を見せびらかす伊達政宗に、で受け取り「卑しきは触れない」と答えた読書人

春日山城内で謙信譜代の直江信綱が刺殺される事件が起こり、信綱の未亡人おせんの入婿となる。

石田三成と親しかったため、関ヶ原の戦いで主君景勝に反家康の行動をとらせ、兼続は大軍を率いて山形城の最上義光を攻める。

戦後、出羽米沢に移封され、新たな領国経営は問題山積、おせんとの間にいまだ子ができず直江家の運命はいかに――?

享年60(1560-1619)。石田三成、後藤又兵衛大久保彦左衛門と同い年。

詳細

1.謙信寵愛

直江兼続兼続は、上田長尾氏の重臣・樋口惣右衛門兼豊の嫡男。

幼児より上杉謙信上杉謙信に仕え、美貌をもって寵愛されました。また幼少のころより学問を好み、聡明のうわさが高かったので五歳上の上杉景勝景勝の近習となりました。

2.運命の愛

天正一〇年(1582)十月、謙信譜代の与坂城(三島郡与坂町)主・直江信綱と山崎秀仙が、春日山城内で政務の打ち合わせをしていました。御館の乱の論功行賞のもつれから、山崎に遺恨をもつ毛利秀弘が突然入ってきて山崎を刺殺。脇差で身を守ろう信綱は、かえって逆上した毛利秀弘に刺殺される事件が起こりました。

信綱に嫡子なく、直江家の断絶を惜しんだ景勝は、信綱の未亡人おせんを入婿させました。かくして兼続は二三歳で樋口与六改め直江山城守兼続となりました。

3.東北版 関ヶ原の戦い

関ヶ原の戦い。越後の上杉家は西軍に属していました。兼続は石田三成石田三成率いる西軍と上杉家で、東軍を挟み撃ちして、徳川家康家康を倒す作戦を立てた――とするは誤り。それのみか家康を挑発した、有名な「直江状」についても今は疑問視されています。

しかし主君景勝に反家康の行動をとらせたのは恐らく兼続で、景勝は兼続に命じて東軍の山形城の最上義光を攻めさせました。

兼続率いる大軍が、長谷堂城を囲んだのが関ヶ原同日の慶長五年(1600)九月一五日。長谷堂城は容易に落ちず、関ヶ原西軍が一日で敗北したという報せに、兼続は退陣を余儀なくされました。

4.直江家断絶

同年一二月、景勝が家康に降伏すると、兼続と本多正信との接近が始まり、景勝の政治的地位に影響しました。同六年八月、上杉氏は出羽米沢三〇万に移封(いほう)されました。

所領が縮小された以上、今までと同じように家臣を召し抱えることは困難で、家臣のリストラ、新たな領国経営のため問題は山積。これらを処理し、米沢藩の礎を築いた兼続でしたが、いまだ子に恵まれていませんでした。かくして本多正信の次男・政重を養子に迎え、徳川政権との繋がりに努力。

しかし兼続に男子が誕生したため、政重は直江家を去りました。且つまた兼続の一男二女はいずれも早くに亡くなり、兼続は自らの意思で直江家を断絶させました。元和五年(1619)兼続六〇歳死去後も夫人・おせん在世中は、扶助料三〇〇〇石の待遇が与えられました。

5.泥棒読書人

遡ること文禄の役で上杉家は、釜山にほど近い慶尚道南東海岸の熊川(ウンチョン)に出陣。

この戦いの合間に兼続は同国の文献を集め、宋版『史記』『漢書(かんじょ)』などをもたらし、京都五山僧と交友。のちに米沢に禅林寺を建立後、禅林文庫を設立して、『文選』(もんぜん)出版のための直江版を刊行しました。

『史記』『漢書』は歴史書。『文選』は中国の詩文選集で、周から南北朝の梁(りょう)までおよそ一〇〇〇年間の文学作品を集大成したもの。『史記』『漢書』の文章量おびただしく、『文選』も同様です。

これら参照する層というのは、科挙の科目にあたる儒教経典『論語』『孟子』『礼記』(らいき)などは当然頭に入っているはずで、兼続は武将というより読書人といった方が近いかもしれません。米沢九代藩主・上杉鷹山は、そのような?兼続を信奉して、その文武、施策を藩政の手本としました。

直江兼続 相関図

上杉氏被官・長尾氏

越後守護代 長尾氏

謙信景勝

樋口氏

  • 祖父:樋口兼光(上田長尾氏 重臣)
  • 父:樋口惣右衛門兼豊

直江氏

  • 義父:景綱(長尾為景・晴景・景虎の三代に仕える)
  • 妻:おせん(景綱の娘)
  • 養子:本多正信次男・政重

諸国

参考文献

関連記事

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