解説
1.概要
トトゥラクテンギ(道吐楽唐只,도투락댕기)は、礼装用のテンギ(リボン)の一つで、朝鮮時代以降に用いられました。
円衫やファロッなどの婚礼服を着て、黒絹冠の簇頭里(チョクトゥリ)や花冠を被った上で、後頭部に長く垂らしました。
2.形態
深紅・黒などの絹製で、上部は二等辺三角形でその下は二つに分かれています。丈はスカートのチマより若干短く180cm、幅10cmほど。
外側は花紋や文字紋を金箔で施したり、玉、蜜花(ミルファ:黄琥珀)、七宝(しっぽう)などをつけて、左右に分かれているテンギを繋ぎます。
3.文様
イラストは、文献2から一九世紀のトトゥラクテンギをベースに制作しました。
二等辺三角形に鳳凰、その下に蝙蝠(コウモリ)、柘榴(ザクロ)、双童子、左側に吉祥文字である壽(寿)福(福)康寧、右側に儒教四徳の仁義禮(礼)智、左右末端にはデフォルメされた壽福(スボク)を配置。
蝙蝠は「福」と同音で漢字も似ている理由から。実(み)に種が多く詰まっている柘榴と、中国の子供二人・双童子は子宝を願って。トトゥラクテンギの縁には一般に、雷紋(ヌェムン,뇌문)を施します。
4.付け方
内側の三角形底辺中央に二本の紐をかけ、この紐を頭の髷に巻き付けて固定します。
後ろのリボンであるトトゥラクテンギに対して、前のリボンはトゥリムテンギ(드림댕기)と言います。
5.メモ
朝鮮の新婦は、物理的に縁起を担いで婚礼に臨んでいたとは! ノリゲの次に描いてみたいなと思っていたのが、華麗にも奇怪な印象を受けるこのトトゥラクテンギ。単独で見るとタペストリーみたいだな、と思いました。自分の部屋の壁に飾ってみたい感じです。運気も上がりそう?
参考文献
- 金英淑(編著)・中村克哉(訳)『韓国服飾文化事典』(東方出版、2008年)
- 張淑煥(監修・著)・原田美佳 他(著・訳)『朝鮮王朝の衣装と装身具』(淡交社、2007年)